花のヘアピン

 土曜、朝の通勤電車。
女子高生に紛れて、女子高生の姿で座っている、リアル変態男を目撃した。
膝丈のプリーツスカートから太い足、白いハイソックスから、筋肉が盛り上がって見えるたくましい大柄男で、歳は40代くらい。おかっぱのカツラ、可愛らしい花のヘアピンが一本前髪にさしてあるのが、昔のようで野暮ったい。
化粧ノリの悪い肌、ヒゲが濃いのであろうか、大きなマスクをしている。目だけ見ると、どことなくダチョウ倶楽部の寺門ジモンに似ていた。
どこにでもあるような紺色のブレザーの制服に身を包んで、ちんまり可愛く座っているつもりの男の一挙手一投足を、この女子専用車両の全ての女子が、目の端で注視している様子だ。
コスプレ会場に紛れるならともかく、現実にやってしまえる行動力に、脱毛。おっと脱帽しながら、はて?これは紛れもない変態だよね? 偏った性的嗜好だよね? もしや性同一性障害だったら笑っちゃいけないし.....罰ゲーム? ありり〜?と考えていたら、その男が電車を降りちゃった。(待って、もう少し観察したいの〜ん)その直後、あちこちの女高生グループが爆笑の渦と化す。(私も一緒に笑いたいよ〜ん)
 だって、その男の内股小股のピョコピョコ歩きが、とっても面白くって、反則だわ。
皆の視線や失笑を浴びようと(あなたなら、その気になれば世界を変えられるかも)、女子高生になりきっている男に、私から主演男優賞をあげたい気分だ。朝から面白いもの見せてくれて、どうもありがとう。いってらっしゃい。