地の底の人
山本作兵衛 画文集『炭鉱に生きる』
明治三二年七歳の頃から坑内に入って生涯ヤマを見つめてきた山本作兵衛さんの画文集を手に取り、初めから後りまで一気に読み干した。
臨場感溢れるこの画文集を食い入るように見つめるうち、いつしか私もヤマに入ってゆく。
毎日がいつ落盤やガス爆発などの災いが起こるかもしれないという緊張感が少し迫った気がした。
『ガスケの花』 YO - EN
黒いトンネルに 燃える石を求め
カンテラの炎が 銀の汗を散らす
あゝガスケの花よ
見る者を焼き尽くす
ツルハシ響け 塊炭叩け こん畜生
こん畜生の炭坑節
友の命と引きかえに
燃える未来はどこにある?
黒いトンネルに 燃える石を求め
カンテラの炎が 銀の夢を揺らす
あゝガスケの花よ
見る者を焼き尽くす
ツルハシ響け 塊炭叩け こん畜生
こん畜生の炭坑節
私の命と引きかえに
燃える火の国どこにある?
労働環境からこの時代、災いを避けるため、禁忌や呪術を信じるのも無理はないだろう。
本文中に特に気になる怪奇現象がある。
ガス爆発で大火傷で重症の一坑夫の見舞いにと、医者と見舞客に化けた狐どもが大勢でやってきて、治療をすると言って包帯を取り、身体中の瘡蓋をベリベリ剥がして死なせてしまったというのだ。狐は火傷の瘡蓋を好んで食べるという。
そういえば、ジブリアニメの『もののけ姫』にも、そんなシーンがあったのを思い出した。