詩『衝き動かす』

yo-en2018-09-06

『衝き動かす』


排気ガスと埃舞う
スーパーの帰り道
橋の坂を上がれば
とつぜんきゅうに
女が走りだす刻よ
両腕にぶら下げた
キャベツや大根が
手枷のように阻み
骨がもつれようと
ただひとつの方角
ひたすら見つめて
見逃すまいと走る
一刻一刻移りゆく
ベール雲の吐息が
女の心を捕まえて
階段を駆けのぼり
野菜袋を放り出し
決して目は離さず
女を衝き動かした
ものの正体を確と
カメラに捉えると
眼球から滲み出し
女の血肉を暖めて
しゅうっと音出し
何か放出してゆく

      2018/9/6 詩/YO-EN