ヨシエちゃん


 今日、学校で体育の時間に先生が、「今日は河原で雪合戦をするよ」と言ったので、男子も女子もみんな一斉に大はしゃぎ。私も雪合戦が大好きで、嬉しくって心の中でヤッターと叫んでいた。
 瑞穂ちゃんと一緒に行こうと思って探したら、もう先に行ってしまったので、陽子ちゃんに「一緒に行こ」と声をかけたら、「私は知らん、亜矢ちゃんに聞いて」と言う。私はちょっと嫌な感じがしながら、亜矢ちゃんの所に行って声をかけると、「ちかちゃんに聞いて」と言う。私の心の中で、何かがモヤモヤと動いて、そしてドキドキして、水の中で溺れている感じがした。
 早くその場から離れたくて、直ぐに駆け足でちかちゃんの所に行ったけど、声をかけずに、ちかちゃんのポニーテールが揺れるのをじっと見ていたら、そのうち河原に着いた。
 河原は昨日の夜にたくさん雪が降ったので、ふわふわして、きらきらして、きれいだった。
 先生の掛け声で、二組に分かれて雪合戦が始まった。みんな夢中で雪を丸めて手当たり次第投げていた。あきらくんがトシヤくんに「お前は作れ。丸めて渡せ。」と言っていた。そしたらトシヤくんの顔から笑顔が消えた。
 女子は、はしゃいでキャーキャー言った。私もキャーと小さく声を出してみた。 
 突然、ゴツーンと大きな音がして、急に目の前がチカチカした。頭がすんごく痛くてその場にうずくまったら下に大きな雪玉が落ちてて、割れた中に石が見えていた。飛んできた方を振り向くと、トシヤくんがニヤニヤして笑っていた。
 私は痛くて我慢ができず、涙が出るので、雪を掴んで顔を拭いた。そばで瑞穂ちゃんのキャーキャーと楽しそうにはしゃぐ声がして、すぐに雪玉を作っている振りをした。
 瑞穂ちゃんが「そんなとこに座ってたら当てられるよ」と言う。瑞穂ちゃんは優しくて好き。「うん」と首を振ると、頭がジンジンカッカする。そおっと手を当てると、そこには大きなタンコブが出来てて、小さな卵みたいに、私の手の平に収まった。

 今日、私は雪合戦が嫌いになった。 (ヨシエちゃん5年生冬のある出来事)