家の影

ふるさとにカエル。
さんねんぶりにカエル。
『そっか、家の大改装したんだよね。
 何回か来てるけど、やっぱ、馴れないよ。』
私は、この家に、私の家の玄関を、廊下を、台所を、居間を、父の書斎を、階段上がって風呂場を、物干し竿の体操服を、私のピンクの絨毯の部屋を、弟のブルーの絨毯の部屋を、ベランダにある沢山の盆栽の鉢を、小さな壁のシールさへ、何ひとつ忘れず、影を重ねてみる。
強烈に鮮明に、思い出せる。
25年前のお父さんの顔、お母さんの顔。憎らしい弟の丸坊主
『やっぱり、歳とったよね〜。』
私が唐突に言うので、母は何を今更という顔して見つめてきた。
そんな母の目は、25年前と、ちっとも変わっていなかった。